3DCGと3DCAD

同じ3Dを前提にPC上で作り出すものですが、グラフィック系のソフトと図面(CAD)系のソフトではそのデータの作り方と言うか考え方が随分と異なります。

20年ほど前グラフィック系の3Dソフトは価格的にもこなれてきて、手の出しやすい環境になりつつありましたが、製図に関しては2DのCADが普通で、まだ3Dが当たり前とは言えない状況でした。

その時の依頼は、グラフィック系の3DCGによるデザインができているので、それを「製品化するため図面化してほしい。」というものでした。

ところが、ポリゴンが基本の3DグラフィックのデータというのはCAD図面とあまり相性がよくありません。

つまり、絵として扱う事はできるけど形状データそのものは、ほとんど役に立たないと言う事です。
そこで、グラフィックで作られた形状を細かくスライスして多数の断面形状を出力しました。

もちろん、この形状もただの”絵”なので、そのままCADに落とせるものではありません。

金型で作る事を考えると、アンダーカット(金型から抜けない逆勾配)の部分などは形状を元のイメージを損なわないレベルで直していかなければなりません。

また、金型屋さんには2次元で出力した図面で話をしなければならないので、全てのアールが一意的に決まるように基準を設けて行かなければなりません。

現在のように3DのCADデータそのものでやり取りできる時代ではありませんでしたから、『一意的に形状が決まる寸法基準の取り方』がとても重要だったのです。

こうして再構成した外観形状から、さらに勘合部を検討し、部品の組み込み等の内部構造を作っていくので、図面は寸法だらけになりとても見にくいものとなりますが、仕方ありません。

このころから工業製品のデザインは、コンパスと定規で描けるものから複数の曲面を多用するようなものに移っていき、様々な実験的デザインが世の中に溢れることとなっていくのです。